研究概要 |
会合高分子が形成する物理ゲルに界面活性剤を添加すると, レオロジー挙動が劇的に変化することが知られている. 本研究では, ゲル化する会合高分子の中で構造の最も単純なテレケリック高分子(両末端にのみ会合基を有する線状高分子)が形成する物理ゲルに注目し,これに添加した面活性剤が微少ずり下での動的粘弾性に与える影響を, 架橋点を通じての高分子鎖の会合基と界面活性剤の相互作用を取り入れた網目理論に基づいて研究した. その結果を以下に述べる. まず, 動的弾性率は単一型のMaxwellモデルでよく表され, その界面活性剤濃度依存性は鎖末端の会合基と界面活性剤の混合の非理想性の強さに応じて異なることが示される. 添加界面活性剤濃度の増加と共に, 平坦弾性率と緩和時間にピークが現れるが, 一般的な傾向として前者は会合数の上限・下限の存在が原因であり, 後者は対結合架橋点(スーパーブリッジに相当する)の崩壊・生成に起因すると考えられる. 混合ミセル形成が協同的(すなわち, 混合の非理想性強度を表す相互作用パラメータχが負)の場合は, 混合ミセルの寿命は純粋ミセルの寿命よりも長い. その結果として, 平坦弾性率と緩和時間に現れるピーク高は高くなる. 緩和時間に関しては, 界面活性剤を加えることに伴って対結合架橋点の寿命が短くなることも, ピーク高が高くなる原因である. 一方において, 混合ミセル形成が非協同的(すなわちχ値が正)の場合は, 混合ミセルの寿命は短い. χ値が小さいときは, 低いながらも平坦弾性率と緩和時間にピークは現れるが, χ値が大きい場合はピークは現れず, どちらの量も界面活性剤濃度の増加に伴い単調減少することが示される.
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