本研究の目的は、化学反応ネットワーク系の非平衡統計力学と非線形応答に関する理論の構築を行い、その枠組みを用いて、様々な生物で行われる、様々な(情報処理過程、エネルギーや状態の伝達、変換、記憶、に潜む普遍的側面と、系の個性と機能性との相関を明確にすることである。 22年度は、系統的に構築された少数成分からなる可逆触媒反応ネットワーク系群を用い、1)分子数の少数性が引き起こす、熱力学的平衡状態への遅い緩和、2)理想的な代謝反応ネットワーク系のデザイナビリティとその環境揺らぎに対するロバスト性、の2点について、研究を行った。 1)可逆2体触媒反応ネットワーク系において、特に啓がミクロで分子数が非常に少なくなっている状況における、系の統計力学的性質として最も基本的な性質である、平衡状態への緩和の性質について調べた。そしてこのような触媒反応系では一般に、系の分子数が温度や各分子の状態エネルギーに依存したある閾値よりも小さき場合、平衡状態への緩和がドラスティック 2)触媒反応ネットワークのエネルギー論的側面と、代謝系の理想的なデザインを研究する導入として、エネルギー収支に応じた(詳細釣り合いを満たす)反応率で反応を行う2体触媒反応ネットワーク系における、非平衡定常状態と熱力学平衡状態への緩和の、触媒ネットワーク構造依存性について研究を行った。そして特に冨栄養な状況では速く活発に反応しつつも、貧栄養な状況では反応をゆっくり持続的に進めることが可能な、「Active & Robust」なネットワークの基礎構造を見出した
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