本研究の目的は、化学反応ネットワーク系の非平衡統計力学と非線形応答理論の構築を行い、その枠組みを利用して、様々な生物の様々な部位で様々な形で行われる、様々な(広義の)情報処理過程、エネルギーや情報の伝達、識別、変換、蓄積と取り出し(記憶)、に潜む普遍的側面と、系の個性と機能性との相関を明確にすることである。特に、細胞内や前生命的な状況をモデル化した化学反応ネットワークにおける、分子の少数性が引き起こす非定常揺らぎや緩和過程、ネットワーク構造と機能性とエネルギー効率の関係等を明らかにする事で、生命が示す自己状態維持:再生、再帰性(自己複製)、および一見それと相反する性質に思われる様々な自己変化:適応、分化、進化、に潜むメカニズムの抽出を試みる。
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