研究概要 |
本年度は,岩手県釜石沖の中規模繰り返し地震[Matsuzawa et al. (2002)]の周辺の地震について,ダブル・ディファレンス法[Waldhauser and Ellsworth(2000)]による詳細な震源決定法および,マルチタイムウインドウ・スペクトル比法[Imanishi and Ellsworth(2006)]による断層サイズ・応力降下量の推定を行った.その結果,岩手県釜石沖の地震クラスタでは,小地震が最大地震のすべり域の端および中心付近の3ヶ所に集中して発生していることが分かった.それぞれのクラスタでの地震のほとんどは,同じ場所で発生している繰り返し地震であることも分かった。さらに,応力降下量の推定から,最大地震に比べて,小地震の応力降下量が小さいことが分かった。 これらの解析結果は,岩手県釜石沖の中規模繰り返し地震近傍で発生する地震は,この地震の周囲や内部の比較的弱いパッチで発生していることを示唆する。また,今回推定された最大地震および小地震の地震時すべりから,中規模繰り返し地震のインターサイスミックな期間に,そのすべり域内で非地震的すべりが生じている可能性があることが分かった。釜石沖の地震クラスタにおける小地震の活動には,最大地震の地震サイクルの後半に活動が活発になるという特徴があり,本研究の結果から小地震の活動は,中規模繰り返し地震のアスペリティへの応力集中の過程を示している可能性が示唆される。この研究の内容は,Geophys. Res. Lett.誌にて発表した。
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