研究概要 |
昨年度(2008年1月)に予測されていたM4.7の繰り返し地震が岩手県釜石沖の繰り返し地震クラスタで発生したため、さらにデータを追加して研究を行った。その結果, 2008年の地震は, 2001年や1995年の地震とほぼ同じ場所を破壊していることが分かった。また, 2008年の地震はこれまでのM4.7前後の地震と同様に, 同じクラスタ内の他の小地震に比べて応力降下量が大きいことが分かった。 さらに, 他の地震クラスタへの震源決定法(ダブル・ディファレンス法[Waldhauser and Ellsworth(2000)])および, 断層サイズの推定法(マルチタイムウインドウ・スペクトル比法[Imanishi and Ellsworth (2006)])の適用により, 大きな余効すべり(非地震性すベりの加速)の到達により, 繰り返し間隔が短くなるだけでなく, 波形の相関も低下している(すべり分布も変化している)繰り返し地震の例が明らかになった。また, 特に大きな外部からの擾乱が考えられない場合でも, 応力降下量とすべり量の変化が見られる繰り返し地震クラスタも存在することが明らかになった。 これらの結果は, 小繰り返し地震は, 外部からの影響(余効すべり等)により発生間隔だけでなく, 規模や破壊過程も影響を受けること, アスペリティの強度に時間変化があることを示唆する。このような地震サイクルの複雑性の原因としては, 震源の詳細決定や応力降下量の推定により明らかとなったアスペリティ自身の微細構造(階層構造)が重要である可能性がある。
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