研究概要 |
西南日本の沈み込み帯では、フィリピン海プレートの沈み込みに起因した現象であると考えられている非火山性深部低周波微動が発生しているが、その発生過程に関する明快な結論は得られていない。その理由として、微動の発生場所が構造探査等で得られる地殻構造と対応可能な精度で推定できていないことを挙げることが出来る。そこで、平成19年度に和歌山県田辺市において実施した稠密地震計アレイ観測で得たデータと紀伊半島に設置されている定常観測点のデータを用いて、微動発生場所の推定を行った。本研究課題でおこなった稠密地震計アレイ観測は、平成19年12月20日から平成20年5月6日まで実施した。観測には固有周波数1Hzの地震計と連続記録型オフランレコーダを用い、観測点を16箇所に200-300m間隔で十字型になるように設置して、上下動及び水平動の3成分観測を行った。得られたアレイ観測データから、平成20年2月中旬、3月中旬から3月下旬、4月下旬に低周波微動が確認でき、特に、3月10日から3月21日頃にかけて顕著な低周波微動が観測された。解析の結果、微動は、紀伊半島南西部から中部にかけて発生しており、稠密地震計アレイの設置場所から震央距離40km程度離れた紀伊半島中部(奈良県南部)で発生した微動も観測できた。微動の発生場所の深さは、30-35km付近に位置し、平成19年度に実施した既存地震観測データを用いたトモグラフィー解析で得られた3次元地震波速度構造と比較すると、Low Vp, high Vp/Vsの特徴を示す領域に位置する。このことから、微動の発生過程において流体の関与が示唆される。
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