2004年スマトラ地震及び2003年十勝沖地震により放射された地震波によって、西日本で遠地トリガリングされた深部低周波地震・微動の発生メカニズムを調べた。深部低周波地震・微動はプレートの沈み込み帯での現象であり、巨大地震を伴う一連のプレート境界での地球科学的現象を理解するためには、この現象のメカニズム解明が必要不可欠である。主としてHi-netの地震波形記録を解析した。表面波の周期に呼応して誘発微動の振幅が変化していることから、表面波によるトリガリングである。誘発された微動の震源の再決定を行い、より鮮明な震源分布を得た。スペクトル解析により、周期約20秒の表面波によって顕著に誘発されていることが確認された。観測された表面波から、直接、導出した表面波のカーネルを介して地下の歪み・応力の時間変化を抽出する手法を考案した。表面波の中でも、剪断歪みを伴うLove波より、剪断と体積歪みを伴うRayleigh波の方が微動発生との相関が高いように見えた。鉛直伸張・水平収縮の歪み変化に対して最も大きな微動が観測されることが分かった。更に微動はプレート境界に平行な断層運動によって生じると仮定し、クーロン破壊応力変化を求めることで、微動の発生が説明できた。特に2003年十勝沖地震の場合、剪断応力のみを伴うLove波との相関が低いため、やはり体積変化が大きな役割を果たしていると思われ、これは微動の発生に流体が関与していることを示す。応力変化と微動の振幅について定量的な関係から、更にメカニズムの詳細を調べるために、UC Santa CruzのEmily Brodsky氏と議論を行った。
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