研究課題
平成19年度は、本申請課題であるアモルファス水氷表面(またはグラファイト)からの脱離水素分子の運動エネルギー測定を行うための飛行時間分布(Time-of-Flight:TOF)測定装置を組み立てた。予備実験として、まずシリコン表面から脱離(直接引き抜き脱離または吸着誘起脱離)する水素分子の運動エネルギー測定を行った。しかし、運動エネルギーを測定するために必要な脱離分子を四重極質量分析計で検出することができなかった。そこで、構築したTOF装置の性能を確かめるために、水素吸着シリコン表面からの散乱水素分子のTOF測定を行った。その結果、これまで水素分子の散乱過程はすべてtrapping-desorption scatteringであると報告されてきたが、本研究で使用する装置を用いて散乱分子の運動エネルギーを測定したところ、実はdirect-inelastic scatteringが主な散乱過程であることを見出した。このことから、本研究課題で構築したTOF装置は運動エネルギーを評価するのに十分な性能を有することが分かった。次に水素原子ビーム源の性能評価をシリコン表面における昇温脱離法によって評価したが、特に問題は見られなかった。そこでTOF飛行距離に問題があると考え、現行のTOF飛行距離60cmから35cm程度に縮小した実験装置を組み立てている。また、新たな四重極質量分析計を用いて、まずはSi表面での引き抜き実験を行っている。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Surface Science 602
ページ: 1585-1588