研究概要 |
本研究では,原始惑星系円盤進化の副産物として巨大ガス惑星が形成されたとする理論モデルを構築する.原始惑星系円盤は,磁気流体不安定によって円盤内のガス間における角運動量の受け渡しが起こり,進化する.しかし,ガス密度の大きい円盤内側は宇宙線によるイオン化が進まず,磁気流体不安定は起こらない.そのため,円盤の内側と外側の境界付近にガスが溜まる.ガス溜まりの密度が,ある臨界密度を超えるとロスビー不安定が起こり,高圧の逆行渦が生成される.高圧の逆行渦は外側を向く圧力勾配と内側を向くコリオリカがつりあって,原始惑星系円盤中で安定に存在することが出来る.円盤中に存在する固体粒子が逆行渦中に入ると,圧力を感じずコリオリカのみ受けるので渦中心へと移動する.非常にたくさんの固体粒子が渦中心に集中すると,固体粒子の自己重力が効いてくる.自己重力の大きな固体粒子は,原始惑星系円盤から大量のガスを取り込み,巨大ガス惑星を形成する. 上記のシナリオに従って巨大ガス惑星形成を考えるために,これまでに開発したガスと固体粒子を2成分とした2次元流体計算を行う数値プログラムに2つの重要な改良を加えた.第1点目は,ガス溜まりの形成を調べるために,粘性項の計算プログラムを導入した.2点目の改良点として,巨大ガス惑星形成の最終ステージでは自己重力が重要であるため,自己重力の計算プログラムを導入した. 導入した数値プログラムの中で自己重力の計算は特に非常に長い計算時間を要するため,これまでテスト計算を主に行い数値プログラムが確実に動作することを確認した.一方,粘性を導入した計算においては円盤外側から流れてきたガスが内側との境界に溜まりガス溜まりを形成し,その後,ロスビー不安定を通して高圧の逆行渦を自然に形成することを確認した.
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