研究概要 |
微惑星の合体成長で形成された原始惑星が, 円盤からガスを獲得しガス惑星になると考えられてきた. しかし, 私たちの行った数値計算によると, 土星形成は難しいことが示された. この困難を解決するため, 円盤ガスの重力不安定を通してガス惑星を形成するというモデルが提案された. しかし, 土星の重元素に富んだ大気組成は, このモデルで説明できない. この状況を改善すべく, 円盤進化の副産物としてガス惑星が形成されたとする理論モデルを本研究で構築する. 円盤め外側領域にあるガスは宇宙線によってイオン化され, 中心星に近い領域のガスは中心星の輻射でイオン化する. 一方, ガス密度の大きく温度の低い円盤の中間領域(デッドゾーン)に存在するガスはイオン化しない. イオン化したガスは, 磁気流体不安定を引き起こし内側へと移動する. その結果, デッドゾーンの外側と内側境界にガスが溜まる. ガス密度が臨界密度を超えるとロスビー不安定が起こり, 高圧の逆行渦が生成される. 高圧渦は大量の固体粒子を取り込み, 重力的に強くなった渦はガスも取り込み, ガス惑星へと進化する. 平成20年度は, デッドゾーン境界に溜まるガスのロスビー不安定について調べた. 磁気流体不安定をモデル化するために, ガスに粘性項の計算プログラムを, 昨年度導入したが, 粘性項はガスの中心星方向の落下過程を記述するものの, 粘性加熱により円盤が異常に温められてしまうという欠点があった. この欠点を取り除くために, 輻射による熱の散逸項を今年度エネルギー方程式に導入した. 更に, 数値計算は非常に長い計算時間を要するために, 共有メモリ型クラスタで動くように数値計算プログラムを改良し, 計算速度を向上させた. 導入した輻射項の数値プログラムのおかげで, 円盤は過剰に加熱さないようになった. 円盤進化の結果として, デッドゾーンの境界で多数の渦の形成を確認した.
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