研究概要 |
地殻内部で発生する地震は,断層において,せん断応力の高速低下をともなう破壊が高速に伝播する現象である.実験室内では,この高速破壊に先行して,比較的低速の応力低下をともなう破壊が低速で伝播する現象が見つけられている.この現象は,地震のような不安定な破壊現象に先行して発生するため,その詳細を理解することは地震発生機構の理解において非常に重要である.本研究では,岩石試料を用いた三軸圧縮破壊試験において,広帯域弾性波測定用センサーを用いて,試料内を透過伝播する弾性波の計測を実施し,破壊の成長にともなう弾性波伝播特性の変化について明らかにすることを目的とした.本年度は,弾性波計測の際に大きな問題となる計測ノイズ源を同定し,その原因の除去を行った.また,Westery花崗岩試料を用いて,三軸圧縮破壊試験を実施した.実験条件は,常温・乾燥で封圧は80MPaで一定に保持され,周方向ひずみ速度一定で破壊は制御された.ピーク強度を超えて約10MPa強度が低下するまで載荷され,この間,継続的に透過弾性波の波形が収録された.波形は1秒間に40回ずつ,50MHzでサンプリングされ,1波形は10万点で構成された.2時間程度の載荷で約20万波形が収録され,過去に例を見ない密度での波形収録に成功した.収録された波形は重合され,振幅変化,速度変化を推定することになるが,これは次年度に実施される.また,弾性波センサーを用いた計測であったため,破壊成長時に岩石試料内で発生する微小破壊(AE)の波形も収録することができる.その記録から,岩石試料内で発生した1つの微小破壊について,その継続時間が約10マイクロ秒程度であることも明らかにされた.このような微小破壊の継続時間が推定された例は過去にほとんどない.
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