シリカ成分に富む粘性の高いマグマ(珪長質マグマ)は時として1980年のセントヘレンズの噴火のように噴煙柱が成層圏に届くほど激しい爆発的噴火をする。一方で1990年に始まった雲仙普賢岳の噴火のように殆ど同じ組成を持つマグマが爆発はおこさず、溶岩ドームを形成する事もある。このような噴火様式の多様性は「脱ガス」が決めていると考えられているがその詳細は良くわかっていない。爆発的噴火は被害の範囲が大きい為、噴火予知において爆発の有無を指摘する事は重要である。しかし、現在の噴火予知の方法では爆発の有無を指摘する事は難しい。それは脱ガスのメカニズム、および脱ガス出来なかった気体が起こす爆発のメカニズム良くわかっていなかったからに他ならない。本研究ではまだ解明されていない前者の脱ガスのプロセスに着目する。 平成19年度は気泡を含む高粘性流体周辺の圧力を変える実験を行い、気泡を含む流体が膨張出来る限界の測定を試みた。その結果ゆっくりとした膨張では気泡を含む高粘性流体は気泡体積分率がおおよそ90%程度まで膨張出来る事がわかった。これは研究代表者が以前に行った高速の減圧過程とは異なる結果である。高速の減圧過程では気泡の体積分率がおおよそ70%で気泡を含む流体の気泡壁に穴があき、気泡中に閉じ込められていた気体が大気中に開放される。この結果により気泡を含む流体が膨張できる限界(=脱ガスが起こる条件)が減圧速度に依存する事がわかった。 また、実際の火道では減圧膨張の他に火道内のせん断が脱ガスに影響していると考えられる。よってこの効果を検証する為の実験装置を設計・開発した。最終年のH20年度はこの装置を用いた実験を行う。
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