研究概要 |
同じ火山で噴火する同じ組成のマグマであっても、時には爆発的に、また、ある時には静かに噴火する事が知られている。この様に同じマグマであっても噴火様式が異なるのはマグマ中に含まれる火山ガスが作る気泡の振る舞いが異なる為であると考えられている。地表でマグマが爆発的に噴火する為には何かが爆発的に膨張する事が必要である。マグマに含まれる気泡中の火山ガスは圧縮性を持ち、マグマが爆発的に噴火する事を可能にしている。この気泡中の火山ガスが何らかの要因で噴火を伴わずに大気中に開放されれば(脱ガス)、このマグマは爆発の原動力である圧縮性のガスを失い、爆発的噴火が回避される事が予測される。この脱ガスのメカニズムを解明する為に本研究では気泡を含む高粘性流体が気泡を失う方法を実験的に研究している。特にマグマ中の気泡が脱ガスにより消滅するメカニズムとしてせん断変形に着目している。マグマは火道を上昇して地表に達するが、上昇するマグマと火道壁との間にはマグマの高い粘性率に起因するせん断応力が働く筈である。このせん断応力がマグマ中に含まれる気泡を変形させ、気泡同士が合体する可能性が指摘されている。そこで本研究では、せん断変形により気泡が合体し、実際にマグマ中の気泡が消滅するか否かを、気泡を含む高粘性流体にせん断変形を加える実験により検証した。実験装置はH19年度に開発を始め、H20年度に完成した。H20年度は完成した装置を用いて実験を行った, その結果、ある特定の条件において、せん断変形が気泡を変形させ、気泡が消滅する様子を観察する事に成功した。この条件をさらに定量化する事で実際の火道内における脱ガスが起こる条件を説明できると予測している。
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