研究概要 |
昨年度までの領域気候モデルを用いたシミュレーションにより,インドシナ半島における30-60日周期変動(季節内変動)に伴って山脈の風上側で降水変動が卓越するという振幅分布を大雑把には再現できていた。さらに山脈内部での詳細な分布の再現を目指して,シミュレーション結果の検証のための観測データを整備した。具体的には,山脈域で降水を観測しているオムコイ気象レーダデータを収集し,既に得られている地上降水量データと併用してレーダ降水量の推定を行った。中緯度先進国で発達した推定手法が熱帯モンスーン性降水活動に適用できることを確認し,その場合のレーダ観測の時間間隔と降水量の推定誤差の関係を定式化した。さらに,1999年を対象に時間解像度1時間,空間解像度2.5kmのレーダ降水量プロダクトを,オムコイ気象レーダの観測範囲内で作成した。 このプロダクトを用いてシミュレーション結果を検証した。計算領域や初期条件・境界条件データセット,積雲パラメタリゼーションなどを変更しつつ山脈内部での降水分布の再現を目指し,ある程度の改善が認められたが,物理メカニズムの解析を行うほど良好な結果を得るには至らなかった。 東南アジア各国では降水レーダ観測が盛んに行われているものの,その時間間隔は各国の国力に応じてまちまちである。本研究の成果は,粗い時間間隔であっても,降水量プロダクトの空間解像度を適切に設定することで,推定誤差を許容範囲内に抑え,実用に耐えるデータを得ることができることを示唆している。観測データの効果的な利用法を提案できたと言える。また,各国の異なる時間間隔の観測データを総合化し複数の国にまたがった誤差の均質なレーダ降水量プロダクトを作成できる可能性を指摘できた。
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