平成19年度は、球面浅水系及び2層の浅水系において、以下の研究成果を得た。 1.球面浅水系におけるジェットからの重力波放射 地球回転の効果が緯度変化する球面上で、ジェットからの重力波放射を非線形数値実験により調べた。まず重力波の定量的評価のために、これまでのスペクトルモデルを、高精度高解像度な結合コンパクト差分法モデルに改良した。次に、観測研究に対応する形でジェットを維持する強制項を加え、渦的流れの継続的な非定常運動を再現し、そこからの継続的な重力波放射を調べた。特に基本場ジェットの配置緯度と地球回転効果を変化させたパラメータ走査実験により、重力波の放射・伝播特性を系統的に調べた。その結果、比較的遅いジェット流では、高緯度ジェットから重力波がほとんど放射されず、低緯度ジェットから放射された重力波も高緯度に伝播しないことがわかった。また得られた結果を、f平面浅水系の知見を援用し、重力波ソースの導出及び解析を行うことで解釈した。結果は過去の観測事例とも整合的で、渦流からの重力波放射に関して、重要な知見を与えるものである。 2.2層の浅水系における渦流からの重力波放射 2層の球面浅水系においても、結合コンパクト差分モデルを開発した。基本場として、低気圧の基礎概念である傾圧不安定なジェットを設定し、密度成層間を伝播する位相速度が遅い、短波長の内部重力波の放射過程を調べた。これまでの予備実験により、低気圧的な渦流からの継続的な重力波放射を観測し、位相速度や波長の点で、より現実大気に近い構造を持つことを確認した。今後、渦流からの重力波放射のパラメタリゼーションを実現するために定量的な評価を行っていく予定である。
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