(1)宇和海における多項目連続観測(前年度からの継続)、(2)黒潮の変動に伴う沿岸海域の海況変動に関するデータの解析、(3)これまでの成果の発表を行った。(1)の宇和海における多項目連続観測は、前年の観測結果を参考にして秋に発達する鉛直循環流に着目して実施した。その目的は、秋の鉛直循環流の特徴、形成条件を解明することである。観測データは、鉛直循環流が11月頃に発生し、その流れの大きさは内湾の潮流成分よりも大きく、その時期に最も卓越した流れであることを示した。また、今年度も発生したことから、例年のように発生している可能性がある。さらに秋の鉛直循環流が沿岸域の物質輸送に与える影響について検討するため、関連するデータや資料の収集を行った。(2)では、昨年の観測データの解析を中心に行い、黒潮域由来の海水流入現象と赤潮の時間的・空間的分布変化の関連性について検討した。解析の結果、黒潮域由来の海水の流入によって赤潮プランクトンが沖合に輸送されながら消滅していく過程について新たな知見を得た。このことは、本研究の目的である黒潮域と沿岸域の間の物資輸送に関わる成果であるとともに、地域の養殖業の赤潮対策に関わる有益な知見といえる。(3)これまでの成果の発表を、国際会議、日本の学会で発表した。マレーシアで行われた国際会議(7^<th> IOC/WESTPAC)では、黒潮と沿岸環境の関係における長期的な変動に着目した解析結果について口頭発表を行い、東京で行われた水産海洋学会では(2)で示した黒潮由来の流れが赤潮の解消を引き起こしたことについて口頭発表を行った。
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