研究概要 |
本研究は、熱帯降水システムに伴う潜熱加熱構造が大気大循環に与える影響の理解するため、Spectral Latent Heating (SLH)アルゴリズム(Shige, Takayabu et al.2004, 2007, 2008, 2009)ならびにConvective Stratiform Heating (CSH)アルゴリズム(Tao et al.1993, 2000, 2010)によって熱帯降雨衛星搭載降雨レーダ(TRMM PR)データから推定された3次元潜熱加熱データセットの解析、ならびに簡略化した大気大循環モデルを用いた熱帯大気応答実験を行う。前年度に引き続き、観測されている南北風の浅い子午面循環の構造(Zhang et al.2008)と良い一致を示した東太平洋に注目して、SLHアルゴリズムならびにCSHアルゴリズムによる10年間(1998年~2007年)のデータから月別に作成した潜熱加熱に対する応答の両者の違いについて解析した。SLHの潜熱加熱に対する応答はCSHのものに比べ、大きな振幅を保ったまま加熱域から大気下層を長距離に拡がっていた。SLHの潜熱加熱はCSHのものに比べて浅い鉛直構造を有しており、励起される応答も鉛直構造が浅い。同じ水平波長に対して、鉛直波長が小さければ鉛直群速度が小さくなるため、SLHの応答はCSHのものに比べて、大きな振幅を保ったまま加熱域から大気下層を長距離にわたって拡がることができたと考えられる。また、SLHアルゴリズムの11年間(1998年~2008年)のデータから潜熱加熱の日変化を算出した。この結果、海洋上では、潜熱加熱の振幅の日変化がみられるが、鉛直構造は1日を通してほぼ同じ構造を持っているのに対し、陸上では振幅の日変化だけでなく、鉛直構造に大きな変化が見られた。
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