研究課題
比較的高解像度の大気大循環モデルを用いた数値実験を通して、中・高緯度帯と熱帯で発達する擾乱の卓越波数の特徴について調査した。成長モード育成法の実験からは、摂動の振幅が小さくなるにつれて、発達する摂動の卓越波数が大きくなる傾向があることが分かった。これは、摂動の振幅が比較的大きいときは、中・高緯度上部対流圏の傾圧波動に伴う摂動の発達が顕著であるのに対して、摂動の振幅が比較的小さいときは、熱帯対流圏の対流活動に伴う摂動の発達が顕著であることの現れと解釈される。また、同じモデルを用いて行なわれたアンサンブル手法による実験的再解析(ALERA)の40個の解析値の主成分分析(三つの領域に分けて行った500hPa面高度場のEOF解析)から以下のことが分かった。解析値に含まれる誤差の主要なEOFモード(EOFI-10)の卓越波数は、熱帯よりも中・高緯度帯の方が小さく、北半球中・高緯度帯よりも南半球中・高緯度帯の方が小さい。この両半球の違いは、海陸分布の違いだけでなく、同化に用いた観測データの数の違いに起因すると考えられる。どの領域のEOFも卓越波数はモード番号とともに増加する傾向にあるが、中・高緯度帯に比べて熱帯のEOFモードの卓越波数の増加の割合は小さく、EOF21-30における卓越波数は、主要なEOFモードのときと逆転し、中・高緯度帯よりも熱帯の方が小さい。この結果は、今回の研究で用いたモデルの解像度において、解析値に含まれる誤差の分布を適切に表現するためには、中・高緯度帯よりも熱帯の方がより多くのアンサンブルを必要とすることを示唆している。
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Geophysical Research Letters 36, L08501
ページ: doi : 10. 1029/2009GL037380