研究概要 |
環境水(特に温泉水)中のウラン、トリウム、ラジウム等の放射性核種のモニタリングを進めていく中で、試料水の冷却によって生成する微小の結晶に含まれる放射性核種の影響が無視できないことがわかってきた。そこで、環境水中の放射性核種のモニタリングと同時に、これらの微結晶に含まれる放射性核種の影響についても検討を行った。測定対象として、大量に微結晶が存在すると考えられる温泉沈殿物(湯花)から粒子成分を分離しそれらの放射性核種の測定を行った。これより硫酸イオンの多い温泉では硫酸バリウムと同時にラジウムが共沈して、その娘核種の影響が環境水中の放射性核種の濃度を変動させる一員になる可能性があることを確かめた。 環境水中に含まれる宇宙線生成核種ベリリウム-10をモニタリングするため、東京大学加速器研究施設にて加速器質量分析(AMS)にて行うための申請を行い採択された。本年度はベリリウム-10をAMSで効率よく分離測定するための開発を中心に行ったため,測定実績は15試料程度であった。鉄共沈と陽イオン交換を組み合わせたベリリウム-10の分離測定方法では回収率は60%程度であった。本実験方法の回収率でも測定、モニタリングは十分可能であるが,今後AMSの測定時間の短縮が必要になる可能性があるため、試料の量を増やし、担体の量を減らす方向で実験を進める予定である。そのため本年度の研究で開発された方法では回収率が低下する可能性が高い。そこで従来の分離方法で実験を進めることと平行して、新しい分離方法である抽出クロマトグラフ物質を用いた迅速分離法の開発にも着手する予定である。
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