環境水(特に温泉水)中のウラン、トリウム、ラジウム等の放射性核種のモニタリングを進めていく中で、試料水の冷却によって生成する微小の結晶に含まれる放射性核種の影響が無視できないことがわかってきた。そこで、環境水中の放射性核種のモニタリングと同時に、これらの微結晶に含まれる放射性核種の影響についても検討を行った。測定対象として、大量に微結晶が存在すると考えられる温泉沈殿物(湯花)から粒子成分を分離しそれらの放射性核種の測定を行った。これより硫酸イオンの多い温泉では硫酸バリウムと同時にラジウムが共沈して、その娘核種の影響が環境水中の放射性核種の濃度を変動させる一員になる可能性があることを確かめた。 環境水中に含まれる宇宙線生成核種ベリリウム-10をモニタリングするため、東京大学加速器研究施設にて加速器質量分析(AMS)にて行った。秋田県玉川温泉の温泉水試料を対象に、イオン交換を利用したベリリウムの分離方法を開発し、2003年から2006年まで毎月毎のベリリウム同位体^<10>Beと^9Beを調査した。これより、測定期間中にはベリリウム同位体の濃度に大きな変動がないことがわかった。また、^<10>Beの濃度と湧出量、^<10>Beの起源となる雨水中の^<10>Beフラックスから、玉川温泉の集水域を求めることができた。さらに、ベリリウム同位体比^<10>Be/^9Beからベリリウムの起源を推測することも可能となり、97%以上のベリリウムが火成岩由来であることをつきとめた。この結果、宇宙線生成核種を利用し環境水の地球化学的な情報を得るごとができることがわかった。 現在、玉川温泉以外の環境水のベリリウム同位体を調査すべく研究を継続中である。これらの情報を追加することより、水循環等のさらなる知見が得られることが期待される。
|