研究概要 |
これまでに開発した大気微量成分の同化システムに実観測データを適用し対流圏および下部成層圏におけるオゾンと関連化学種の解析精度の検証に取り組んだ。解析結果に対してモデルバイアスの影響が深刻であったため、バイアス補正技術を導入しその効果を検証した。バイアス補正技術を導入することでモデルバイアスを動的に推定し解析精度を改善できることを確認した。オゾン場自身の検証に加えて、化学過程を介して連動する非同化・関連化学種への影響を検証した。更に、化学輸送モデルのパラメータ推定に対する共分散膨張および局所化手法に関する感度実験を行い、最適なシステム構成を検証した。これら取り組みにより、大気質変動研究のための実用的な大気微量成分同化システムの枠組みが得られた。構築したデータ同化システムを用いて観測システムシミュレーション実験を実施し、大気汚染(主に下部対流圏オゾンを対象)の実況監視に向けた効果的な観測網に関する考察を行い、以下の事項を明らかにした。(1)ユーラシア大陸から日本における春季の地上オゾンの挙動を知るためには、オゾン自身の他に、NOX,HNO3,CO,PANの観測情報を得ることが重要である。(2)境界層内にオゾン観測データが存在しない場合には、NOXなど関連化学種の高精度な地表観測から地表オゾンの情報を効果的に引き出せる可能性がある。(3)自由対流圏ではオゾン自身を高精度に観測することが極めて重要である。オゾン観測データの鉛直分解能が4km以上になると自由対流圏でのオゾン分布推定が大きく劣化する。
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