全天イメージャーで観測された多波長オーロラ画像に加えてイメージングリオメータで観測された銀河雑音吸収(CAN)等のデータを使い、オーロラの三次元空間構造を考慮して、入射電子フラックスのエネルギー・空間分布を復元する手法の開発・改良を行った。逆問題解析は、拘束条件付き最小二乗法を利用した。さらに、入射電子フラックスが常に0以上であるという拘束条件を加え、得られた非線形最小二乗問題をガウス・ニュートン法により解くプログラムを開発した。各種データの重みは、交差検定法を使って観測データを最も良く再現するように決定した。この手法の可能性や誤差を調査するために、入射電子フラックスのエネルギー・空間分布、観測点配置、観測データのノイズレベル等を様々に変化させて数値シミュレーションを行った。得られた解析結果について国内外で学会発表を行い、論文としてまとめ、電子情報通信学会論文誌に投稿した。これにより、今後この手法を実際の観測データに応用した際に、誤差を定量的に評価することが可能となった。 上記解析ツールを、スカンジナビア半島北部で実際に観測されたサブストームイベントに適用し、オーロラ入射電子のエネルギー分布を求めた。さらに、欧州非干渉散乱レーダーで同時観測された電子密度高度分布から求めた入射電子のエネルギー分布との比較を行った。その結果、両者のエネルギーピークには比較的良い一致が見られたが、観測装置の時間分解能の違いや観測位置のずれのため未だ曖昧さが残っている。今後さらにイベントを増やし、統計解析を行う予定である。
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