研究概要 |
最大埋没深度1km程度の付加体浅部が発達する三浦・房総半島において,付加過程初期の変形と物性変化を被っている地質体を対象に,地質調査と透水試験用泥質岩(おもにシルト岩)サンプリングを実施した。地質調査および変形構造解析の主要なツールとして,本年度(平成19年度)に購入したライカシステムズ製の広視野顕微鏡を用いた。 得られた試料を円柱成形し,京都大学理学部地質鉱物学教室において透水試験を開始した(なお本機器は,広島大学理学部に移管されたため,平成20年度の測定はそちらで行う予定である)。現在のところ12試料の測定を行った。 現在までの現地調査,構造解析,それに透水試験の結果,付加体形成初期の変形にともなう物性変化を被っている堆積物は,肉眼や顕微鏡下で変形構造が確認されないものの,粒子の配列様式と透水特性が大きく異なることが判明した。変形に伴って物性変化を被った堆積物は,被っていない堆積物に比べ最大25%にまで透水係数が小さくなった。また,物性変化を被った堆積物は,地震発生帯上限付近に対応する封圧80MPa付近において,間隙率が急減することが確認され,その深度領域において間隙水を急激に排出し,周辺の強度低下をもたらしている可能性を示した。 平成20年度は,さらに多くの測定を行い,これらの現象を確認するとともに,地震発生領域上面深度において排出される間隙水量の定量,および,排出された間隙水によってどの程度堆積物の勇断強度を低下させるのか,検討を行いたい。
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