堆積物中における細胞外DNAの分布を解明するため、本年度は陸上堆積物についての研究を実施した。関東平野で掘削により採取した沖積層から、深度9-47mの泥質堆積物を採取し、細胞外DNAを抽出し、定量評価を行なった。その結果、2.9-28.3ng/g sedimentの濃度で分布していること、深くなるにつれ減少する傾向があることが明らかになった。その絶対量は海底堆積物表層で報告されている値(5-35μg/g)の約1000分の1程度であったものの、堆積物中の全菌数から計算により推定される微生物細胞内のDNAとほぼ同量で存在していることが明らかになった。さらに、抽出した細胞外DNAについて、16S rRNA遺伝子を対象とし、微生物相解析を行った。異なる3深度について解析を行ったが、いずれも微生物の多様性は低く、ほとんどのクローンがCholoroflexiに属するものであった。DNA量としては細胞内DNAに匹敵するものの、全DNAを抽出し、微生物相解析を実施した結果と比較すると細胞外DNAにおける微生物の多様性は非常に低く、この原因として細胞外DNAが酸化分解などによる塩基置換や断片化などの損傷を受けている可能性が示唆された。今後は細胞外DNAの分布と共に損傷の割合などを解明する必要があると考えられる。そのための手法の一つとして、様々な酵素処理やリアルタイムPCR法を組み合わせる手法が考えられることから、本年度はリアルタイムPCR法の手法の確立も行なった。様々なプライマーセットや、様々な試薬を用いて条件検討を行い、100copy程度の遺伝子を検出できる条件を確立した。
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