研究概要 |
本研究の目的は、1. 約60万年前に世界的に同時絶滅した深海生底生有孔虫(Pleurostomellidae科)の殻の内部構造(歯板の形態,起源,層構造)を明らかにすること、2. 絶滅有孔虫殻の光学的性質・殻の安定同位体比を解析して堆積物中での生態を明らかにすること、3. 最終的に絶滅するに至った原因が汎世界的な深海底の低水温化や酸化的環境の変化と如何に関連しているのかを古海洋学的に解明するための古生態情報を提示することである。 20年度は、国際深海掘削計画(ODP)によってインド洋で採取された深海底コア中の絶滅深海生底生有孔虫(Pleurostomellidae科)の化石を摘出し、炭酸塩の殻が続成作用で変質していない、比較的大型の種(P. brevis)について、殻薄片または部分的に殻を取り除いた観察用標本を作成した。生物顕微鏡と電子顕微鏡を使用して、上記目的の1. で示した殻の内部構造(特に歯板の起源や層構造)を観察したところ、他の有孔虫グループに見られる内部構造物(歯板)のつくりや起源とは異なることが明らかになってきた。これまでの観察からは、歯板の層構造は観察されておらず、その起源も殻の延長が殻内部に延伸して歯板を形成しているのではないと思われるが、なお多くの標本の観察を要する。また、インド洋で採取された深海底コア中の絶滅深海生底生有孔虫殻の酸素・炭素安定同位体比測定を行なうための測定標本の摘出を行なった。21年度(最終年度)に測定する予定である。
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