先カンブリア時代のストロマトライトという堆積岩は、シアノバクテリアなどの微生物の皮膜に砂泥が付着してできたものであり、生命の初期進化を探る重要な物証とされてきた。しかし近年、その堆積構造が非生物性起源であるという可能性が排除できないとする議論が数学的モデルによって提起された。こうした中で、三角錘状のストロマトライトの縞状構造に着目することによって、ストロマトライトが生物性であるのか、非生物性であるのかを決定する重要な根拠となり得ることが最近報告された。この研究によると、無機化学的形成モデルでは、海水と接触する部分で縞が成長するため一枚の縞は、どこでも縞の垂直方向に一定の厚さになるように成長する。一方、ストロマトライトの成長モデルでは、上方から降り積もる堆積物がバイオマットにより固定されるため、縞の厚さは縞の斜面部分では薄くなり、重力方向に均一な厚さを持つようになる。本研究は、この二つのモデルのどちらが妥当であるかを明らかにするために、ストロマトライト断面の画像データを用いて、縞状構造の幾何学的形状を数値的に定量評価する手法を確立することを目指す。 本年度は生物顕微鏡BX5IN-33P-0(オリンパス株式会社)を導入し、広視野かつ高解像度の画像データを取得するために、以下の改良を行なった。 (1)広視野Cマウントアダプタに200万画素CCDカメラを付加する。 (2)2.5倍および5倍といった低倍率対物レンズを用いた場合にも、照野面全体を均一に照明するために、極低倍用コンデンサを装備する。 低倍率から高倍率までの研磨薄片画像データを取得した結果、どの倍率の画像においても輝度むらの少ないものであった。研究対象のストロマトライト岩石試料については、数mmスケールの縞状構造を広範囲にカバーする切断面画像が得られるようになり、今後系統的に研究を遂行する準備が完了した。
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