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2008 年度 実績報告書

カンブリア紀の節足動物化石に残された光学器官の機能形態学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19740320
研究機関群馬県立自然史博物館

研究代表者

田中 源吾  群馬県立自然史博物館, 群馬県立自然史博物館, 主任(学芸員) (50437191)

キーワード光スイッチ / 古生物 / 節足動物 / カンブリア紀 / 光学的古生物学 / 例外的に保存の良い化石 / 地層 / 進化
研究概要

20年度は前年度にスウェーデン南部、キンネキューレ南方から採取した岩石標本について処理をおこない、眼が保存された多くの節足動物化石を採集することに成功した。特にフォスフェイトコピナと呼ばれる節足動物には前方に立体視できる眼が一対確認できた。また、現生のカイアシ類によく似た節足動物の化石には前方に1つだけノープリウス眼のような眼が確認できた。また三次元的に保存された三葉虫類の複眼も多く発見することが出来た。三葉虫の複眼化石についてSEM観察し、三次元座標データを取得する予定であったが、前所属機関(京都大学)の耐震移転工事に伴うSEMの廃棄にともない、SEM画像の取得が困難となってしまった。この研究については現在も中断したままになっている。一方、フォスフェイトコピナの化石には眼の化石のほかに殻表面が強い金属光沢を放つという光学的な特徴がある。これは現在の魚類の闘争にしばしば使われている光反射攻撃に類似する物がある。そこでフォスフェイトコピナの殻の断面をTEM観察することを試みた。フォスフェイトコピナの殻はリン酸塩鉱物から構成されているため、このままではTEM試料として扱うことが出来ない。そこで、フォスフェイトコピナと同様の金属光沢をもつ、国内産の昆虫化石(ハムシの仲間)の鞘翅について TEM 試料の作成と形態観察を試みた。その結果、鞘翅内部に厚さ100〜200ナノメートルの電子密度の高い層と、厚さ50〜150ナノメートルの電子密度の低い層の互層から構成されることが明らかになった。そこで、現生の昆虫のクチクラの研究を参考に、電子密度の高い層に屈折率1.73を、電子密度の低い層に屈折率1.40を適用し、特性マトリクス法という手法で可視光領域の反射率を計算した。その結果、反射率は波長400ナノメートルの紫外領域と、波長550ナノメートルの可視光領域(青〜緑色)にピークが認められ、ハムシ化石の鞘翅に認められた青色の金属光沢とよく一致した。つまり、ハムシの化石と同様、フォスフェイトコピナの殼に見られる金属光沢も多層膜反射による構造色である可能性が高い。カンブリア紀の海には光を中心とした生物の進化があったことが伺える。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] An exceptionally well-preserved Eocene dolichopodid fly eye : function and evolutionary significance2009

    • 著者名/発表者名
      Gengo Tanaka, Andrew Parker, David Siveter, Haruyoshi Maeda and Masumi Furutani
    • 雑誌名

      Proceedings of the Royal Society of London B 276

      ページ: 1015-1019

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The visual system and paleoecology of the Silurian ostracod Primitiopsis planifrons2009

    • 著者名/発表者名
      Gengo Tanaka, David Siveter and Andrew Parker
    • 雑誌名

      Journal of Paleontology 83

      ページ: 414-421

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Recent benthonic ostracod assemblages as indicators of the Tsushima Warm Current in the southwestern Sea of Japan2008

    • 著者名/発表者名
      Gengo Tanaka
    • 雑誌名

      Hydrobiologia 598

      ページ: 271-284

    • 査読あり
  • [学会発表] 日本産化石ハムシに保存された構造色2008

    • 著者名/発表者名
      田中源吾・谷口秀樹・前田晴良・野村真一
    • 学会等名
      日本古生物学会
    • 発表場所
      仙台(東北大学)
    • 年月日
      2008-07-05

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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