研究課題
水底(海底・湖底)表層堆積物中に存在する天然ガスハイドレートは、いわゆる深層型(水底下数100m)に対して熱力学的に安定な温度圧力環境下にある。これらを解離温度まで上げるために必要な比熱、ならびに解離させるのに必要な解離熱(潜熱)を求めることを目的として、当該年度では混合ガス系(メタン・エタン)の解離熱測定をさらに精度良く行なうと同時に、水底環境下における比熱測定を試みた。昨年度には、ロシア・バイカル湖の湖底堆積物中で発見されたメタン・エタンを主成分とする混合ガスハイドレートに焦点を当て、解離熱のガス組成依存性が求められた。エタンの割合とともにサンプル1mol当たりの解離熱は増加すること、また測定値は純粋なメタンおよびエタンハイドレートの解離熱文献値の中間をとることが明らかにされた(混合ガスハイドレートの解離熱が求められたのは本研究が最初である)。しかしながら、メタン・エタン混合ガス系ではガス組成によって結晶構造が変化し、解離熱についてもガス組成に対する不連続性の存在が予想された。当該年度ではサンプル生成法を改良することで、サンプルのガス組成不均一性を小さくすることに成功した。これらの工夫の結果、メタン・エタン混合ガスハイドレート解離熱のガス組成依存性が精度良く求められたが、結晶構造の違いによる解離熱の極端な変化は見られなかった。また、ガスハイドレート単位重量当たりの解離熱についても求められ、これらの混合ガスハイドレートは解離熱が数%〜10数%程度大きくなることが示された。一方、純粋なメタン・エタンハイドレートを熱量計内部で人工的に生成し、-10℃〜+10℃程度までの温度範囲におけるモル比熱が定量的に求められたが、混合ガス系については今後の課題である。上記の成果については現在も複数の学術雑誌に投稿中である。結論として、本研究は水底下に存在する天然ガスハイドレートの生成・維持・解離過程を熱力学的観点から解明していくための基礎情報を得たと言える。
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Geochemistry Geophysics Geosystems 34
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Proceedings of the 6th International Confe rence on Gas Hydrates, Jul. 6-10, 2008, Vancouver, Canada
ページ: http://hdl.handle.net/2429/2695
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ページ: http://hdl.handle.net/2429/2694
ページ: http://hdl.handle.net/2429/2693
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