本年度においては、MgO(ペリクレイス)単結晶を試料としたX線非弾性散乱測定を常圧で行った。また、これらのデータを解析し弾性波速度を精密に決定するためのプログラムの開発も行った。その結果として得られた弾性定数は文献値と非常に良い一致を示した。また、これまでに同手法によって行われた決定精度は数パーセント以上の誤差を含んでいたが、本研究においては、SPring-8のBL35XUで利用できる12アナライザーを有するX線非弾性スペクトロメータを使用することにより、常圧ではあるものの、1%以下の精度で決定することができた。この結果については論文にまとめ、現在投稿中である。 加えて、鉄を含んだMgO(フェロペリクレイス)単結晶の合成を行い、この試料について常圧での測定を行った。得られた弾性定数は、文献値よりも小さい値を示した。この理由として三価の鉄が存在することによる空孔の影響が考えられるため、今後価数の推定を行う予定である。また、X線非弾性散乱用のダイヤモンドアンビルセル型高圧発生装置と圧力媒体としてネオンガスを用いることにより、24万気圧の圧力条件において鉄を含むMgOに対する測定を行い、X線非弾性散乱スペクトルを得た。非弾性散乱のピークは、すべてではないが、十分強く、現在解析を行っている。 今後は、更に高い圧力条件での測定を行う。また、フェロペリクレイスだけではなく、ケイ酸塩鉱物を試料とした測定も行う予定である。
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