研究概要 |
本年度は, 300GPa(=300万気圧)以上の圧力を安定に発生させる技術を確立し, 地球内核構成物質に関連する鉄系合金のその場X線観察を実施した. 地球の内核を物質科学的に解明するためには, 地球内核条件を再現することが極めて重要である. しかしながら, 300GPaを超える圧力を安定に発生することが技術的に難しく, 330GPa以上の圧力領域にある地球内核条件を定常的に再現することが困難であった. そこで300GPa以上の安定な圧力発生技術の研究を行った. 高圧力発生は, ダイヤモンドアンビルセル超高圧発生装置を用い, 蛍光が極めて低い高品質のダイヤモンドをダブルべべルド型の形状で先端径30ミクロンに加工したアンビルと組み合わせることにより, 300GPaを超える圧力を安定して発生することが可能となった. また地球内核構成物質に関連する鉄系合金としてGdFe_2の放射光メスバウアー分光測定を302GPaまで実施した. 希土類元素の4f局在電子は圧力の影響を受け難く, 特にGdFe_2ではGdの4f電子が担う磁気モーメントが磁気特性に強い影響を及ぼすため, 100GPa以上の圧力においても磁性が保持されることがわかっていたが, より高圧力下での磁気特性に関しては不明であった.今回の分光測定により, 200GPaという超高圧下で最終的に磁性が消失することが明らかになった. また150GPaを超える圧力下でのメスバウアー分光測定はこれまで報告されておらず, それを遥かに凌ぐ300GPa以上での測定に世界で初めて成功した. 300GPaを超える圧力発生の実験技術の確立および高圧メスバウアー分光測定の成功により, 今後地球中心核の物質科学に関する様々な新しい知見が得られるものと確信する.
|