本研究では、表面波プラズマを用いてキトサン表面を処理し、その表面特性を解析すると共に、血液凝固促進剤としての検討を行った。表面波プラズマによる改質処理は、放電ガス種を変えた二段階のプロセスで構成され、アルゴンまたは酸素プラズマにより、高分子主鎖の切断および結合子形成のための前処理をした後、アンモニア等のプラズマを照射しアミノ基の導入を行った。酸素プラズマによる前処理の後、ヘリウムーアンモニアプラズマで処理したキトサンの血漿カルシウム再加凝固時間は、Controlに対して55.2%に短縮しており、血液凝固特性が向上することがわかった。X線光電子分光法による表面解析結果によると、アミノ基等の窒素系官能基が増加しており、血液凝固特性に影響したと思われる。また、混合ガス(He-NH_3 またはN_2-H_2)プラズマによる処理では、特定の混合ガス条件でNHラジカルの生成率を向上できたが、同時に生成される水素原子および水素ラジカルによりアミノ基が還元され、窒素系官能基の修飾率(N/C比)に顕著な違いはみられなかった。パルス変調プラズマによる処理では、200Hz程度の低周波でマイクロ波を駆動したときに、N/Cが向上する結果が得られた。これらの結果は、高エネルギー粒子、中性ラジカルおよび水素原子による還元を独立して制御することの重要性を示しており、高速バイポーラ電源により高分子膜に入射するイオンエネルギーを制御し、その効果を検討した。実験結果によると、低い結合エネルギーで結合した末端基から脱離が進行し、バイアス電圧により官能基を修飾する平均的な結合サイトを制御できる可能性があること、またサンプルへのバイアス電圧を0〜-200Vの範囲で変化させても、アセチル基に由来するN-C=0比の変化は小さく、アミノ化率向上の妨げとなっていることがわかった。
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