研究概要 |
本年度は画像計測システムの製作とこれを用いた基礎的な実験,またイオントラップ装置改良のための数値計算を行った. (1)画像計測システムの製作.ビーム物理の理論と実験を比較するためには,イオンプラズマの断面方向分布を精度良く測定する必要がある.そこで,蛍光面付きMCPとCCDカメラによるイオンプラズマ断面方向分布の画像計測システムを製作した.この方法は多くのイオン種に対し高い感度と空間分解能が実現できる.直接的に測定できるのはイオンの実証間分であるが,そこから断面方向の温度(速度空間広がり) とチューンディプレッション(加速器分野で使われる自己揚の強さを現す指標)も決定できる.実際に充分な性能を持っていること実験的に確認し,現在,学術誌への投稿の準備を進めている. (2)共鳴の誘起と横方向分布の変化.イオンプラズマに共鳴を誘起して,その密度分布の変化を画像計測システムにより観測した.その結果,イオンプラズマ中の個々のイオンに独立に誘起されるインコヒーレント共鳴とイオンプラズマ全体の集団的運動に誘起されるコヒーレント共鳴が同時に観測された.また共鳴により断面方向の粒子輸送が促進される様子も観測された.これらの結果に関しても学術誌への投稿め準備を進めている. (3)イオントラップ改良に向けた数値計算実験.上述のように画像計測システムは非常に有用な手法であるが,その性能を十分に発揮するためには計測システムや補助電極の配置を最適化する必要がある.3次元の粒子追跡コードにより最適条件の探索を行った. これらの結果を踏まえ最終年度となる来年度は, 実験装置の改良とバッファガス冷却によるイオンプラズマの高密度化を行い,ビーム中の非線形な共鳴現象に対する実験的検討を進める.
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