左手サイクロトロン遮断、プラズマ遮断、高域混成共鳴層、右手サイクロトロン遮断が存在する高密度プラズマにおいて、任意の電子密度・磁場構造における電磁波と電子バーンシュタイン波のモード変換過程の特徴は冷たいプラズマの波動方程式を解いて得られる電磁波モードに関する散乱行列成分を用いて記述できる。この散乱行列成分はまた、プラズマ中に入射された電磁波の反射波偏波を計測することで実験的に得ることができる。本研究ではこの散乱行列成分を数値的に得る為の計算コードの整備及び、実験的に得るための偏波計測システムの検討を行うことを目的としている。本年度は大型ヘリカル装置(LHD)を含む実際のプラズマ実験配位においてこの散乱行列を得るための数値計算コードの作成に主力を注いだ。低密度側の加熱用ミリ波の入射点から光線追跡を行い、光線が反射する位置を調べ、反射点における密度勾配方向を求めて一次元上に密度と磁場分布を再構築する。この再構築されたスラブプラズマにおいて波動方程式を解くことで、任意の伝播方向設定に関する散乱行列を求めることができるようになった。この数値計算コードを用いれば、実際の実験装置において、電子バーンシュタイン波加熱用アンテナ及び、反射波偏波計測アンテナをどの位置に設置するのが適当かを数値的に検討することができる。また、モード変換過程を経てプラズマ外部に放射される熱放射された電子バーンシュタイン波由来の電磁波の最適な受信条件や、その偏波についても数値的に検討することができる。境界条件を設定して3次元的な波動伝播を解く方法とは異なり、デスクトップPCの性能で短時間での計算が可能であることから、様々な実験条件について、探査的な検討を行うことができることも利点の一つである。
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