本研究の目的は、磁化プラズマの実効的粘性係数を渦の流速場計測を用いることで実験的に決定することにある。流速場計測にはこれまで方向性ラングミュアプローブ(DLP)を用いてきたが、今年度は流速の絶対値計測が可能なレーザー誘起蛍光(LIF)ドップラー分光システムを導入し、初期実験を行った。波長可変色素レーザーを用いて準安定状態のアルゴンイオンを励起し、脱励起時の発光(誘起蛍光)を観測することでイオンの速度分布関数に関する情報が得られる。核融合科学研究所のHYPER-I装置を用いて生成したアルゴンプラズマにおいて、レーザー経路および受光系の位置を変化させながら測定することで、イオン流速の径方向分布を観測することができた。周方向速度についてはDLP計測とLIF計測で定性的な一致が見られたが、径方向流速に対しては両計測が異なる結果を与えた。原因として色素レーザーの発振波長ドリフトが考えられるため、今後、波長の絶対較正を行う必要がある。ヘリウムプラズマ中に形成される特徴的な渦(プラズマホール)の速度場の計測を計画しているが、ヘリウムイオンには可視光領域における簡便なLIFスキームが存在しないため、不純物として少量のアルゴンガスを混ぜることを検討した。ヘリウムに対して10%以下の少ないアルゴン濃度においてレーザー誘起蛍光を確認することができた。また、非線形項を含めて流体方程式を解析することで流速場とプラズマの粘性の関係式を導出し、その妥当性を検討した。
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