研究概要 |
炭素数3以上の直鎖アルキルアンモニウム塩は,ラメラ型の二重の層状構造をもった固液中間相「rotator相」を融点直下の広い温度範囲で形成する。このrotator相は,イオンが層面内方向へ二次元的に自己拡散する異方性イオン伝導体である。本研究では二次元的高イオン伝導体の実現を目指して,rotator相へ少量のリチウムイオンなどを添加し,分子運動や構造への影響をアルキル鎖長の異なるアルキルアンモニウム塩について系統的に調べることを目的としている。 平成19年度は特に炭素数4の塩化ブチルアンモニウムに塩化リチウムを約2〜10wt%の種々濃度で添加した試料について,.動的構造を調べた。室温における電気伝導度はリチウムイオンの添加によって低下する傾向が見られ,^7Li NMRスペクトル線幅も塩化リチウムと同等であることから、イオンの拡散運動性が低いことが考えられる。一方、塩化リチウムの添加によって、50から60℃には、新たな相転移点が現れた。この温度以上の高温相での^7Li NMRスペクトルは、低温相で見られる比較的線幅の広いものに加えて線幅の狭い成分が観測されたことなどから、拡散運動性の高い新たな構造・運動をもった成分が存在することが明らかになった。今後、この高温相の動的構造を詳細に調べて明らかにするとともに、炭素数5〜12の塩化アルキルアンモニウムについても塩化リチウム添加の分子構造・運動への影響を系統的に調査する予定である。
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