研究概要 |
炭素数3以上の直鎖アルキルアンモニウム塩は, ラメラ型の二重の層状構造をもった固液中間相「rotator相」を融点直下の広い温度範囲で形成する。このrotator相は, イオンが層面内方向へ二次元的に自己拡散する異方性イオン伝導体である。本研究ではこの二次元的なイオン伝導の向上を目指して炭素数4, 6, 8, 10, 12の塩化n-アルキルアンモニウムのrotator相へ約2-10wt%の種々濃度で少量の塩化リチウムを添加し, 電気伝導度や構造へおよぼす影響を系統的に調べた。 いずれのLi^+イオン添加試料でも, 低温の結晶相からrotator相への転移温度はLiCl無添加物に比べてほとんど変化しなかったが、融点は約5wt%添加物で約40〜60K低くなり、rotator相を形成する温度範囲が狭くなる傾向が見られた。Rotator相における電気伝導度は, 無添加物に比べて, LiClを約4wt%添加したC_<12>H_<25>NH_3Clで約3倍, 約5wt%添加したC_6H_<13>NH_3Clで約10倍の向上が見られ, アルキル鎖長が短いほどLi^+イオン添加によって電気伝導度がより大きくなる傾向が見られた。また, 粉末X線回折により, Li^+イオンを添加してもrotator相におけるラメラ層間隔にはほとんど変化が無いことを確認した。^1Hおよび^7Li MAS NMRスペクトルからは, LiClを添加したいずれの塩化アルキルアンモニウムでも, rotator相の低温側において, Li^+イオンはアルキルアンモニウムイオンの親水基末端付近にある2種類の異なったサイトに存在しており, 温度上昇とともにこの2サイト間でのLi^+イオンの交換は速くなっていることが観測された。
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