研究課題
昨年度の懸案事項であった、結晶氷のスペクトルに含まれる帰属できない成分について、実験上はアモルファス氷の残量が異なると考えられるどの条件で氷を生成してもこの成分が消えないため、アモルファス氷に由来するものではないと判断し、計算機シミュレーションとの比較に委ねた。その結果、内殻正孔を生成したことによる内殻正孔寿命内の水素原子の動きがスペクトル形状を歪める可能性があることがわかった。これは、氷の内殻発光スペクトルの帰属を難しくするものであるが、H_2O、D_2Oの測定で、動く原子の重さを変えて比較することにより正しい帰属が可能となった。水-アセトニトリル混合溶液中の水の電子状態について、アセトニトリル濃度が非常に高いところで測定を行い、水分子がアセトニトリル中で孤立することによりガス状のスペクトルに近づくことがわかった。この系についてもH_2OとD_2Oの比較を行い、内殻正孔寿命内の水素原子の動きがスペクトル形状を大きく変えることを確認した。1相から2相に分離する相転移点(アセトニトリルモル分率0.38,Tc=272K)近傍での温度変化による軟X線発光スペクトルについて、昨年に引き続いて、精密な温調による測定を行ったが、やはり顕著な変化を観測することはできなかった。これは本質的に、272Kの相転移点に向かってミクロ不均一性が増大してゆく効果があったとしても、様々なドメインサイズの混合状態となると、局所的なプローブである軟X線発光分光では違いが見られないことを表していると考えられる。
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Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS) 106
ページ: 15214-15218