研究課題
金は化学的に不活性な金属であり、永遠や不変の象徴であるが、2-3nm程度の金クラスターを二酸化チタンなどに担持すると、突如として化学的な活性を示すようになり、一酸化炭素の低温での酸化反応などに対し極めて高い触媒活性を示す。この金の触媒性発現機構については、様々な仮説が立てられているが、いずれも決定的な結論には至っていない。本研究では、この金クラスターの触媒活性発現機構を表面科学的な手法を用いて明らかにすることを目的としている。本年度は、(1)担体となる二酸化チタンの局所的な電子状態(2)二酸化チタン表面と金ナノクラスターとの電子的な相互作用 を走査トンネル顕微鏡、光電子分光法、密度汎関数計算などで調べた。その結果、(1)これまで酸素欠損に局在すると信じられてきた欠陥由来の過剰電子が、5配位チタンに広く分布していること(2)二酸化チタンに担持した金ナノクラスターが欠陥サイト(ステップや酸素欠損など)に吸着し、二酸化チタン表面の過剰電子を受け取って負に帯電していること の2点が明らかとなった。これらは、金ナノクラスターが触媒活性を示す機構に関連していると考えられ、次年度はこれらの電子状態が触媒活性に与える効果について、実際に触媒活性試験を行って調べる予定である。既に実験は進行しており、負に帯電した金ナノクラスターが高い触媒活性を示す傾向が得られつつある。さらに詳細を調べ、金の触媒活性発現機構を明らかにする。
すべて 2007
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J. Chem. phys. 127
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