本研究では、実際の動作環境に限りなく近い状態、しかも光散乱の強い光機能デバイスにおける、光誘起高速反応を時間的・空間的に分解して測定するための、フェムト秒顕微拡散反射分光システムを作製し、それを光触媒および色素増感太陽電池デバイスに応用する。この様な光機能デバイスの高効率化には、その原理、つまり光誘起化学反応の理解が不可欠である。そのために、高速で進む反応を直接観察することが重要になるが、多くのこれまでの研究では分光実験を行いやすいように調整したモデル試料が扱われており、実際のデバイスに多い光散乱材料を扱えないという欠点がある。さらに実際のデバイスに見られる空間的不均一性を評価するためには顕微測定が必要になる。本提案研究では、この問題・課題を解決するため、顕微鏡下の試料に集光照射した時に拡散反射光として戻ってくる光を検出する新しいタイプの過渡吸収顕微鏡を開発し、実際のデバイスの反応特性を明らかにする。 本年度は、いくつかの光触媒粉末および色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池の測定を行った。可視光応答性光触媒粉末において は、系統的な実験により活性と電荷寿命の良い相関が得られた。色素増感太陽電池に関しては、実際のデバイスの過渡吸収測定に成功し、解放電圧条件での顕徴過渡吸収測定を行った。電解質溶液が光一電流変換効率に及ぼす効果を明らかにした。有機薄膜太陽電池の材料について、界面電荷分離過程のダイナミクスを明らかにすることが出来た。以上の研究結果を、以下に示す学術論文および学会にて発表し、積極的に成果発信を行った。
|