研究概要 |
本研究は金属内包フラーレンと有機ドナー分子を鍵物質とする磁性及び伝導性を併せ持つ超分子系の構築を目標とし、検討を行ってきた。金属内包フラーレンは金属原子から炭素ケージへの電子移動により、空フラーレンとは異なる新規な電子的特性を持つ。その結果、空フラーレンよりも優れた電子受容性、供与性を示し、さらに磁性化、反磁性化の制御も容易である。金属内包フラーレンと有機ドナー分子との複合系は、金属内包フラーレンが持つ非常に高いHOMOと低いLUMOに由来する高い導電性と磁気的な分子間相互作用による磁性特性の両方の出現が期待できると確信する。 平成20年度は始めに金属内包フラーレンLa_2@C_<80>の大量合成を行った。次に得られたLa_2@C_<80>に対する1, 3-双極子環化付加反応を用いた有機ドナー部位の導入に成功した。La_2@C_<80>への付加反応を考えると、5員環と6員環間の結合と6員環同士の間の結合に対してドナー部位の向きによってそれぞれ2種類の付加が考えられ、合計4種類の付加体の生成が考えられる。これに対し、興味深いごとにこの反応からは1種類のみの付加体が選択的且つ高収率で生成することが明らかとなった。付加体の構造は質量分析および各種NMR測定によって行い、電子状態を可視一近赤外吸収スペクトルおよびCV測定によって検討を行った。
|