1.Stevens及びSommelet-Hauser転位に適用可能であり、かつ窒素原子上に不斉中心を有する四級アンモニウム塩の光学分割:窒素上の四つの置換基がそれぞれ異なり、かつエステル部位を有する四級アンモニウム塩をジクロロメタンに溶かし、続いて0.5等量の光学活性ビナフトールを作用させたところ、エナンチオ選択的に1:1の複合体を形成し結晶として析出することがわかった。この複合体形成を利用して四級アンモニウム塩の光学分割を行い、Stevens及びSommelet-Hauser転位に適用可能となる窒素上にキラリティーを有する四級アンモニウム塩を、高いエナンチオ選択性で得ることに成功した。得られた四級アンモニウム塩の光学純度は、ダイセル社の光学異性体分離カラムを用いたHPLC分析により決定した。更に置換基を導入した四級アンモニウム塩についても同様に検討を行い、如何なる構造を有する四級アンモニウムが光学分割に有利であるかについての知見を得た。一方、デザイン型ビナフトールを合成し、新規な光学分割剤としての能力を評価した。現在のところ、無置換型ビナフトールが最も良好な光学分割剤であることがわかっている。 2.Stevens及びSommelet-Hauser転位による窒素-炭素間不斉転写の検討:1で得られた四級アンモニウム塩をカリウムブトキシド等の塩基で処理したところ、StevensもしくはSommelet-Hauser転位が進行し、窒素原子上のキラリティーが炭素原子上に不斉転写され、相当するα-ベンジル、α-アリールアミノ酸誘導体がエナンチオ選択的に得られることがわかった。
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