本研究課題において着目した水素結合型トリアミノイミノホスホラン分子は、これまで有機合成化学において適用例の無い極めて新規性の高い分子骨格であったことから、研究初年度である19年度においては予備実験から得た基礎的な知見を足がかりに、1)アキサルなイミノホスホランをモデルとする基質適用範囲の探索及び、窒素上のアルキル置換基あるいは立体構造が触媒活性・塩基性に与える効果の精査、2)光学活性イミノホスホランを触媒とする、ニトロナートを起点とした不斉炭素-炭素結合形成反応の開発、3)多様な触媒構造に対応可能なアミノホスフィン誘導体の効率的合成法の開発、について重点的に取り組んだ。特に2)については、モデル反応系により効率よく進行することが明らかになっているHenry反応に注力し、触媒構造と選択性及び反応活性の相関から高選択性と高反応性を両立する触媒構造の探索を行った。その結果、アミノ酸から容易に合成されるジアミンと五塩化リンから1段階で得られるP-スピロ型のホスホニウム塩が、本反応の触媒前駆体として最適であることを見出した。また特に、バリンを原料として合成したテトラアミノホウホニウム塩が有効に機能し、これまでに全く例のない高いアンチ選択性と極めて広い基質一般性でHenry反応を促進することを明らかにした。
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