本研究は、ナノスケールの分子デバイスや分子スイッチへの展開、新規な材料としての応用が期待されているロタキサン分子にDNAが持つような自己複製能を導入することで、効率的なロタキサン分子の合成法確立を目指している。本年度は、自己複製のもととなる鋳型分子の合成と、合成した鋳型分子の溶液中における会合挙動について検討した。 1.鋳型分子の母骨格となる[3]ロタキサンの合成を行った。まず環状分子と軸状分子をそれぞれ合成した。次に環状分子と軸状分子から擬ロタキサンを形成し、その後オレフィンメタセシス反応を行うことで[3]ロタキサンを合成した。 2.多点水素結合を利用して二量化する分子の合成を行った。自己複製機能を発現するには、鋳型分子の構造を認識させる、そして認識する部位が必要となる。そこでこの認識部位に多点水素結合により特異的に二量化する分子を用いることにした。二種類の分子を認識部位として合成した。 3.環状分子上に認識部位を持つ[3]ロタキサンの合成を行った。1で合成した[3]ロタキサンの二つの環状分子それぞれに、2で合成した認識部位をエステル結合を介して導入した。合成した認識部位を有する[3]ロタキサンの溶液中における会合挙動をIH-NMRを用いて解析した。その結果、この[3]ロタキサン分子は認識部位が分子内で会合・二量化をおこし、[3]ロタキサンの二量体を形成しないことがわかった。 以上の結果を踏まえ、最終年度となる来年度は[3]ロタキサンの二つの環状分子に異なる分子認識部位を導入をおこない、自己複製能を持つ[3]ロタキサン創製に向けてさらに検討を進めたい。
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