擬一次元構造を有する3元系金属リッチテルライドPd_2NiTe_2の合成に成功した。この化合物はK_2ZnO_2型(空間群Ibam)の構造をもち、NiにTeが4配位したNiTe_4四面体が稜共有した一次元鎖を形成する。この一次元鎖はPd-Pdダンベルによって分離されており、また、Ni-Ni結合が短いことから、Ni間に金属-金属結合が働き、一次元固有の電気伝導性などを示すことが期待される。 この化合物について、電気伝導度測定を行ったところ金属的電気伝導性を示し、磁化率測定からはPauli常磁性を示すことが分かった。さらに、比熱測定を行い、電子比熱係数およびデバイ温度を導出し、電気伝導性およびPauli常磁性の値と比較検討した。さらに、Rietveld解析によって得られた結晶構造パラメータを用いて電子構造計算も行い、上記の物性測定の結果について評価を行ったところ、電気伝導性は3次元的なもので、伝導電子間に弱い電子-電子相互作用が働いていることが明らかとなった。 また、電子構造計算より求まった電荷密度分布からBaderの"Atoms in molecules(AIM)"理論を用いて、それぞれの結合について評価したところ、一次元鎖を形成しているNiTe_4四面体間には、 Ni-Niに金属結合が存在していることも明らかにし、Pd-Pd結合は極めて弱く、Pd間の金属-金属結合は殆ど消失していることを明らかにした。
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