研究概要 |
平成19年度は、可視光増感ユニットと反応活性中心を連結する架橋配位子を変えることによる触媒活性の変化に着目した研究を進めた。これまで2,2'-ビピリミシンを架橋配位子とした錯体合成と反応性が先行しており、これらの研究では、可視光増感部位と架橋配位子部位への置換基の導入による触媒活性の向上などを見出してきた。2,2'-ビピリミシンを架橋配位子として用いると、光増感部位の近傍に、電子的相互作用を保ちうる距離に反応中心を導入しうるメリットがある半面、励起三重項寿命の低下および導入しうる金属フラグメントが限定されるというデメリットがあった。励起寿命の低下を改善する観点から、[(bpy)_3Ru]^<2+>骨格を保ったまま反応活性部位を導入することを目的に、2つのビピリジル配位子を4位で連結したquaterpyridine配位子、およびphenanthrolineの5位でビピリジル配位子を連結したフェナンスリルービピリジル配位子を架橋配位子とした錯体合成を検討し、パラジウムを反応中心に持つ錯体合成に成功した。これらの架橋配位子を有するパラジウム触媒によるアルフアーメチルスチレン類の二量化反応を検討したところ、ビピリミシンを架橋配位子とするものよりも若干反応性が劣るものの、ビピリジル配位子上へメチル基を導入することによって触媒活性が向上し、ビピリミシンのそれを上回ることがわかった。さちに、一酸化炭素とスチレン類との共重合反応活性を調べたところ、ビピリミシンを持つ触媒は瞬時に触媒が失活し、パラジウムブラックを生成するのに対して、先の架橋配位子をもつものは、重合活性を示し可視光照射による活性の向上を見出している。
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