本研究では、ロジウム挿入型白金一次元鎖{[PtRh(PVM)_2(NH_3)_2Cl_<2.5>]_2[Pt_2(PVM)_2(NH_3)_4]_2(PF_6)_6・2MeOH・2H_2O}_n(1)と[PtRh(PVM)_2(NH_2CH_3)Cl_<2.5>]_2[Pt_2(PVM)_2(NH_3)_4]_2(PF_6)_6・2MeOH・2H_2O}n(2)の結晶構造をもとに、同じ金属の繰り返し単位を有する、新規異種金属挿入型白金一次元鎖を構築し、その電子構造の制御を目指した。MeOH中で、[PtRh(PVM)_2(en)Cl_3]・3H_2Oと[Pt_2(PVM)_2(NH_3)_4](PF_6)2・H_2O、過剰量のNaPF_6を撹拌し、溶媒を蒸発させて、緑色金属光沢を持つ、[PtRh(PVM)_2(en)Cl_3]_2[Pt_2(PVM)_2(NH_3)_4]_2(PF_6)_6(3)の単結晶を得た。単結晶X線構造解析の結果、3は、同じ金属配列であるPt-Rh-Pt_4-Rh-Ptの八核金属ユニットを形成し、Cl-アニオンが両端でキャップすることで、閉じた系になっていた。基本構造のCl-アニオンが1つ増えたことで、八核金属ユニットの合計酸化数は+20となり、合計酸化数が偶数であるにも関わらず、3はESRアクティブで、複数の不対スピンを有していることを明らかにした。さらに、「PtRh(PVM)2(NH_2CH_3)_2Cl_3]・3H_2Oを用いて、「Pt_2(PVM)_2(NH_3)_4](PF_6)_2・H_2Oと過剰量のNaPF_6とともにMeOH中で撹拌し、貧溶媒としてヘキサンを加えることで、緑色金属光沢を持つ[PtRh(PVM)2(NH_2CH_3)Cl_3]_2[Pt_2(PVM)_2(NH_3)_4]_2(PF_6)_6(4)の単結晶を得た。4も3と同じく、Pt-Rh-Pt_4-Rh-Ptの八核金属ユニットがCl-アニオンによってキャップされた閉じた系であった。興味深いことに、4は、2と同じ補助配位子と架橋配位子を有している。異なる点は、八核金属ユニットの末端の白金に配位したCl-アニオンが、架橋している(2)か、キャップしているか(4)である。また、4の単結晶は大気中で不安定であり、大気中に単結晶を静置しておくと、緑色金属光沢が茶色金属光沢へと変化する。2の単結晶の色が茶色金属光沢であることを考慮すると、4→2へと結晶中で変化していると考えている。また、このような現象が1では見られないことを考えると、一次元鎖骨格の補助配位子が替わることで、電子構造に何らかの影響を与えていると考えられる。
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