研究概要 |
平面脂質二分子膜にレセプターイオンチャンネル蛋白質を包埋したイオンチャンネルセンサーは,レセプターチャンネルのもつ高感度なリガンド認識能や高い選択性を活用した,高感度かつ高選択性を有する優れたセンサーである.しかし,レセプターチャンネルがその機能を発現できる唯一のマトリクスである脂質二分子膜は,振動や溶液交換などですぐに破れてしまう物理的脆弱さがあり,チャンネルセンサーの一般化への障害となってきた.本研究では,半導体の微細加工によって作成したナノスケールの孔やナノテクノロジーにより作成したナノ構造体を用いて,脂質二分子膜の安定化を行うことを目的としている.平成19年度は,窒化膜付シリコン基板を用いて,異方性エッチングとウェットエッチングによって脂質二分子膜作成用の孔を作成し,その孔の中に脂質二分子膜を形成することに成功した.また,ポーラスナノ構造体を支持体として用いることによる,脂質二分子膜の安定化にも着手している.また,安定化脂質二分子膜作成の基礎知見を得るために,表面赤外分光を用いた分光学的検討も行なった.本研究室のもつ多重内部反射型赤外分光法(MIR-IRAS)を用いて,シリコン基板上にアガロース支持二分子膜が形成していく過程を観察し,脂質溶液から自発的に脂質二分子膜が形成していく過程を,標識を用いることなくその場観察することに成功した(投稿準備中).その他,シリコン基板表面上における種々の生体分子反応(DNAのハイブリダイゼーション,抗原抗体反応,細胞死)をMIR-IRASを用いて非標識でその場観察することに成功した.
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