研究概要 |
超臨界二酸化炭素(SC-CO_2)相と水相の吸収スペクトルのどちらも測定できる二相分配測定セルを作成した。具体的には上部と下部にそれぞれ観測用のサファイヤ窓を一対ずつ取り付けた耐圧セルを用い、光ファイバーポータブル分光器により両相の吸収スペクトルを測定した。 まず初めに、非常に安定な錯体であるCo(acac)_3錯体のSC-CO_2/水間の分配定数を測定した。圧力や温度が分配定数に及ぼす影響について明らかにし、錯体に対するCO_2分子の溶媒和数を求めた。水素結合供与性モディファイヤーとして用いた3, 5-ビストリフルオロメチルフェノール(BTMP)のSC-CO_2/水間の分配定数も求めた。 次に、BTMP添加に伴うCo(acac)_3錯体の分配比の変化について検討した。圧力や温度も変化させ、分配挙動に与える影響についても検討した。Co(acac)_3錯体とBTMPの水素結合による会合体生成により、Co(acac)_3錯体の分配比は大きく増加した。増加率は圧力が低いほど大きくなった。これは、圧力が低い領域では、会合体を生成する際に妨害するCO_2分子の数が少ないためであると結論付けられた。今後はさらに、他の金属錯体やモディファイヤーで研究を行い、詳細なメカニズムを明らかにしていく予定である。本研究で見出された水素結語供与性モディファイヤーによる金属錯体の分配比増大効果は、SC-CO_2抽出における抽出率や分離能の改善に利用できると考えられる。
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