研究概要 |
液液界面イオン移動ボルタンメトリーにおいて、微量イオンの絶対定量、濃縮・分離を行うためには、水相と有機相を薄層にした電気化学セルが必要である。しかし、それぞれの相には電極を挿入する必要があるため、電極反応物が相を汚染するなどの理由で薄層化が困難であった。本研究では、水相には銀・塩化銀電極を、有機相には導電性高分子で被覆したITO電極を用いることで、水相と有機相を薄層化した電気化学セルの開発を行った。有機相で用いる導電性高分子として、各種ポリチオフェン誘導体を検討した結果、ポリマーの酸化電位がそれほど高くなく、ジクロロエタンなどの有機溶媒にも溶解しないpoly(3, 4-ethylenedioxythiophene), PEDOT,を選択した。PEDOTに対して、有機相中の支持電解質アニオンをドープさせることで、有機相を汚染しないPEDOT被覆電極を作成した。PEDOT被覆電極は、電解重合によって作成したが、電極の応答性がもっともよい電解条件を検討した。その結果、充放電容量が7mC cm^<-2>で、有機相中の支持電解質アニオンの濃度に対して良好なNernst応答を示す電極を作成した。電極電位は、同じ条件で作成した場合、±10mV以内で再現よく一致した。同電極を有機相中の対極および参照電極として用い、2電極式の薄層液液界面電気化学セルを作成した。水相と有機相の厚さは、75μmである。同セルを用いて、液液界面イオン移動ボルタモグラムを測定した結果、可逆なイオン移動ボルタモグラムを得ることができた。したがって、作成した薄層セルは、十分に微量イオンの絶対定量・濃縮・分離に応用できる。
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