研究概要 |
東京都心において一般大気と道路沿道で大気粉塵のサンプリングを行い, SEM-EDX及びSTEM-EDXを用いて単一粒子の形状分布及び元素組成を測定した。形状分布の結果から,一般大気では角張,綿状,球形粒子がほぼ等しい割合で存在していたのに対し,道路沿道では角張,綿状粒子が大部分を占めていた。この結果より,道路沿道では道路粉塵やブレーキ摩耗粉のような機械的摩耗に由来する角張粒子,自動車由来ナノ粒子の凝集体である綿状粒子が大気粉塵の構成に大きな寄与を占めることが分かった。更に,各形状別に単一粒子中に含まれる微量元素組成を測定した所,一般大気と道路沿道で共に角張粒子に高濃度のSbが含まれる粒子数が綿状,球形粒子と比べて多かった。また,道路沿道では一般大気に比べて高濃度のSbが含まれる角張,綿状の粒子数が多かった。 大気粉塵の主要な発生源と考えられる粉塵をSEM-EDX及びSTEM-EDXを用いて単一粒子の形状及び元素組成を測定した所,ブレーキ摩耗粉は角張粒子が約90%を占め,粒径が1μm以下のナノサイズの粒子が約60%を占めた。またブレーキ摩耗粉の単一粒子中元素組成の結果から,ブレーキパッドに多く含まれている元素成分であるCu, Sb, Baが大部分の粒子中に多く含まれていた。以上の大気粉塵と発生源粉塵の形状及び元素組成の類似性から,角張粒子にはブレーキ摩耗粉由来であるものが多くを占め,綿状粒子にはナノサイズのブレーキ摩耗粉の含むものや自動車バッテリーの極板から放出される揮発性Sbが凝集したものの寄与が大きいことが明らかになった。 次年度はブレーキ摩耗粉以外の発生源粉塵の形状及び元素組成の特徴について更に詳しく調査し,単一粒子計測による新たな発生源同定及び大気粉塵全量に対する寄与を明らかにしていく予定である。
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